防錆性/耐食性

金属の防錆・耐食性を向上させる化成皮膜と陽極酸化処理とは?処理の種類や特徴、使用用途も解説


金属製品は私たちの身の回りのあらゆる場面で使われていますが、「錆び」や「腐食」は避けて通れない課題です。そこで重要な役割を果たすのが、金属表面に特殊な皮膜を形成して耐久性を高める「化成皮膜処理」と電気的に酸化させて、表面に酸化皮膜を形成させる「陽極酸化処理(アルマイト)」があります。

今回は、化成皮膜処理と陽極酸化処理の種類や特徴、メリット・デメリット、主な用途までをわかりやすく解説します。金属部品・製品の防錆・耐食性を向上させたい方や、化成皮膜処理と陽極酸化処理について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

金属の命を延ばす「化成皮膜処理」とは?

化成皮膜処理とは、金属表面に薬品を作用させることで化学反応を起こし、化学的に皮膜(化成皮膜)を形成する表面処理方法を指します。化成皮膜は企業ごとにさまざまな呼ばれ方をしており、「化学皮膜処理」「ケミカルコンバージョン」などと呼ばれることもあります。

メッキや塗装とは異なり、素材の上に別の物質を乗せるのではなく、金属の表面そのものに化学変化を起こして皮膜を生成しているのが大きな特徴です。これにより皮膜の厚さは非常に薄く均一であり、寸法精度への影響が少ないというメリットがあります。

化成皮膜処理は幅広い分野で活用されていますが、金属を塗装する前の下地処理として重要な役割も担っており、化成皮膜処理を施すことで塗膜の剥がれや錆びを抑えることが可能です。

金属の耐久性命を延ばす「化成皮膜処理」の主な種類

化成皮膜処理といってもその種類は多岐にわたります。例えば、以下の種類が挙げられます。

  • リン酸塩皮膜処理、黒染め処理、その他有機・無機系の化成処理など

東洋ドライルーブでは、リン酸塩皮膜処理の一種でもある「リン酸マンガン処理」と「リン酸亜鉛カルシウム処理」、黒染め処理のいずれにも対応しています。

それぞれの化成皮膜処理は対象の金属や求められる性能に応じて使い分けられています。後ほど詳しく紹介しますが、例えばリン酸塩皮膜処理は主に鋼鉄や亜鉛などの金属に活用する方法です。

[1] リン酸塩皮膜処理

リン酸塩皮膜処理は、金属の表面にリン酸塩の結晶皮膜を形成する処理方法です。主に鋼鉄や亜鉛などに用いられ、防錆性の向上や塗装下地として幅広く活用されています。

 

リン酸塩皮膜処理の特徴

リン酸塩皮膜処理は、表面に不溶性のリン酸塩皮膜をつくり、金属が腐食するのを抑える役割を果たします。元々は金属製品の錆び防止に用いられてきましたが、近年は塗膜の剥がれにくさから塗装下地として活躍しており、自動車製造をはじめさまざまな工業製品に活用されています。

また、リン酸塩皮膜処理は処理方法や薬剤成分によって皮膜結晶の質や形状、厚さなどが異なります。さらに、処理温度も種類ごとに違いが出るので扱う際には注意が必要です。

リン酸塩皮膜処理の種類

リン酸塩皮膜処理には使用する金属イオンによって種類が異なります。代表的なものは以下のとおりです。

リン酸マンガン処理

リン酸マンガン処理は、素材の表面にリン酸マンガン系の結晶性皮膜を生成させる化成皮膜処理です。皮膜重量は約1~60g/㎡であり、リン酸亜鉛処理に比べて皮膜が厚く、表面の粒子が粗いという特徴があります。

リン酸亜鉛カルシウム処理

リン酸亜鉛カルシウム処理は、リン酸亜鉛カルシウム系の結晶性皮膜を生成する処理方法になります。皮膜の主成分はリン酸イオン・亜鉛イオン・カルシウムイオンで構成されており、一般的なリン酸亜鉛処理に比べて耐熱温度が高いという特性を持ちます。そのため、高温での焼付塗装の下地に適しています。

リン酸塩皮膜処理のメリット・デメリット

リン酸塩皮膜処理を活用するメリットとして、防錆性・耐食性が向上し金属の耐久性を延ばせる点が挙げられます。密着性にも優れていることから、塗膜自体の耐久性も高められ、塗装下地として活躍してくれます。

ただし、素材の成分や熱処理、前処理のばらつきなどが影響し、仕上がりにムラが生じる可能性があります。また、大量の部品を一度に処理しようとすると、部品同士が重なっている部分に皮膜が生成されず、外観にばらつきが生まれてしまうなどのデメリットがあります。

リン酸塩皮膜処理の適用素材・主な用途

リン酸塩皮膜処理は主に鉄鋼剤を中心に、亜鉛素材などにも適用されています。特に塗装前処理としての利用が多く、自動車部品やボディなど、工業用の金属部品全般に活用されています。また、塗装下地以外でも金属の引抜き加工や鍛造加工、押出し加工などで潤滑剤と併用し、塑性加工をしやすくする目的で用いられることもあります。

[2] 黒染め処理

黒染め処理は、金属の表面を化学反応によって黒色化させる皮膜処理方法です。鉄鋼の表面にFe3O4(四三酸化鉄)の黒色皮膜(マグネタイト)を形成させることで、鉄鋼の内部を保護する役割を担います。主に鉄、SUS、銅・真鍮用に用いられ、東洋ドライルーブでは銅・真鍮も綺麗に黒染めすることが可能です。

黒染め処理の特徴

黒染め処理の特徴としては、皮膜が非常に薄い点が挙げられます。その薄さは約0.5~2ミクロンであり、部品寸法への影響もほとんどありません。そのため、寸法精度が要求されるねじやシャフトなどの部品にも適用できます。

また、黒染め処理によって外観が黒色に綺麗に染まる点が挙げられます。光の反射を抑えたマットな仕上がりになるため、意匠性の向上や反射防止を目的に使われることもあります。

黒染め処理の種類

黒染め処理は、対象の金属によって種類が異なります。例えば、鋼鉄や合金鋼など、鉄を主体とする金属には一般的な処理方法として、アルカリ性の高温浴に部品を漬ける方法が適用されます。処理工程はシンプルであり、コストも低く抑えられます。

一方、ステンレスは高い化学安定性があることから、通常の黒染め処理だと皮膜を形成できません。そのため、特殊処理として硝酸・硫酸をベースにした化学処理を行い、黒色の皮膜を形成させます。この皮膜は一般的な黒染め処理と異なる特性を持っているものの、ステンレス本来の耐食性を保持できます。

黒染め処理のメリット・デメリット

黒染め処理のメリットは、寸法変化がほとんどないため精密部品にも適している点が挙げられます。また、均一な黒色外観が得られることで、意匠性の高い部品に仕上げることが可能です。比較的低コストに抑えられることから、現在もさまざまな機械部品・治具などに活用されています。

一方、デメリットとしては黒染め処理によって形成された皮膜はこれだけだと防錆性が弱いため、後処理が必須です。屋外や湿度の高い環境、塩分を含む環境などは錆が発生しやすく、これらの環境下での長期使用は向いていません。また、処理温度や時間、濃度管理が悪いと皮膜不良を起こし、色ムラが発生する可能性もあります。

黒染め処理の適用素材・主な用途

黒染め処理は主に炭素鋼や合金鋼などの鉄系素材に使用されることが多いです。特殊処理によってステンレスにも対応できます。主な用途としては、ボルトやナットの締結部品やシャフト・ギアなどの機械部品、工具類、意匠性を重視する金属製品などに用いられることが多いです。

[3] その他の有機・無機系化成皮膜

 

リン酸塩皮膜や黒染め、アルマイト以外にも、用途や素材に応じて使われる有機・無機系の化成皮膜処理が存在します。代表的なものとして、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、不動態化処理などが挙げられます。

これらは主に防錆・耐食性の付与や塗装下地処理を目的とした表面処理で、近年は環境規制への対応や工程の簡素化を背景に、従来技術から新しい処理方式への切り替えも進んでいます。

その他の有機・無機系化成皮膜の特徴

有機・無機系化成皮膜の大きな特徴は、非常に薄い皮膜でありながら高い防錆性や塗装密着性を発揮できる点です。多くの場合、膜厚は数十nm~数μm程度と薄く、寸法精度への影響がほとんどありません。

また、金属の種類を問わず適用できる処理も多く、複合材料や異種金属部品にも対応しやすいのが特徴です。特にジルコニウム系化成処理は低温・短時間処理が可能で、省エネルギー化にも貢献しています。

その他の有機・無機系化成皮膜の種類

代表的な処理方式は以下のとおりです。

クロメート処理

主に亜鉛やアルミニウム表面にクロム化合物の皮膜を形成し、高い耐食性を付与します。自己修復性を持つ点が特徴ですが、六価クロムの環境負荷問題から、現在は三価クロムやクロムフリー処理への置き換えが進んでいます。

ジルコニウム化成処理

ジルコニウム化合物を用いた環境配慮型の化成皮膜で、鉄・アルミ・亜鉛など複数金属に同時対応可能です。スラッジ発生が少なく、工程の簡略化が可能な点が評価されています。

不動態化処理(ステンレス)

ステンレスに含まれるクロムと酸素が結びつき、皮膜を形成・安定化させる処理です。外観を大きく変えずに耐食性を向上できるため、医療機器や食品設備など高い清浄性が求められる分野で使用されます。

その他の有機・無機系化成皮膜のメリット・デメリット

薄い膜でも防錆性・耐食性を得ることができ、さらに密着性も高いことから金属の寿命を延ばせるというメリットがあります。また、ジルコニウム化成処理は環境負荷が低く、省工程化も可能です。

ただし、クロメート処理は環境規制の影響を受けやすいため注意が必要です。また、処理条件の管理が難しく、品質にばらつきが生じるおそれもあります。環境対応や製造コストなども考慮した処理選定が重要です。

その他の有機・無機系化成皮膜の適用素材・主な用途

これらの化成皮膜は、鉄鋼材、アルミニウム、亜鉛めっき鋼板、ステンレスなど幅広い金属素材に適用されます。例えば自動車部品や車体塗装の下地、建築金物や外装材、電子部品などに用いられることもあります。

陽極酸化処理(アルマイト処理)とは

陽極酸化処理は、主にアルミニウム表面を電気化学反応によって酸化させ、人工的に厚い酸化皮膜(陽極酸化皮膜)を形成する表面処理方法です。アルミニウムを陽極として電解液に浸し、電流を流すことによって皮膜を形成させます。

陽極酸化処理の特徴

陽極酸化処理は先述のリン酸塩被膜処理や黒染め処理とは異なり、電気を使って皮膜を形成させる処理方法ですが、金属の表面そのものを変化させ、保護皮膜をつくる点においては同じといえます。皮膜は多孔質構造であり、皮膜の内部に染料や金属塩を吸着させることができるため、染色が可能です。これにより、機能性を向上させるだけでなく、意匠性にも優れた仕上がりを実現できます。

また、アルミニウムは本来電気が流れる素材ですが、陽極酸化処理によって絶縁性を持つようになり、電気が流れなくなります。耐摩耗性にも優れており、部品の長寿命化にも貢献します。

 

陽極酸化処理の種類

陽極酸化処理は使用する電解液や目的によって、以下の種類に分類できます。

硫酸皮膜

硫酸水溶液を使用する方法で、陽極酸化処理の中でも代表的な皮膜処理方法です。耐食性・耐摩耗性に優れています。

自然発色皮膜(蓚酸アルマイト)

自然発色皮膜の代表例として、蓚酸を電解液に用いてアルミ表面に酸化皮膜を形成し、ブロンズ系の色調が自然に得られる陽極酸化処理が挙げられます。

硬質皮膜(硬質アルマイト)

硫酸を用いた陽極酸化処理よりも高電流・低温条件で処理することで、耐摩耗性や耐久性を大幅に向上させた皮膜です。

染色皮膜(カラーアルマイト)

皮膜表面の無数の微細孔に、電気的作用により染料を浸透させて着色する方法で、有機染色だと鮮やかな色を形成できます。

複合皮膜

陽極酸化処理の上からさらに塗膜を施すことで、優れた耐食性を持ちます。

陽極酸化処理のメリット・デメリット

陽極酸化処理のメリットとして、アルミニウムの耐食性・耐摩耗性を大幅に向上できる点が挙げられます。アルミニウムの表面に皮膜が形成されることで外部からの酸やアルカリ、湿気への耐性が高まります。また、摩擦による傷・劣化を防ぐ効果も期待できるでしょう。着色できるため、意匠性に優れたデザインにしたい場合にもおすすめです。

ただし、陽極酸化処理はアルミニウム専用の化成皮膜処理であり、その他の金属には適用されません。また、複雑な形状のものに処理を施そうとすると、膜厚が均一になりにくいという欠点もあります。

陽極酸化処理の適用素材・主な用途

陽極酸化処理は純アルミニウムや各種アルミ合金に適用されます。軽量かつ耐久性を求められる製品を中心に、さまざまな分野で活用されているのが特徴です。例えば、建築用のアルミサッシや外装材、衣装部品、インテリア用品などにも用いられます。

金属の命を延ばす化成皮膜と陽極酸化処理なら『東洋ドライルーブ』

 

化成皮膜処理は、金属表面に化学反応によって皮膜を形成し、防錆性・耐食性・塗装密着性を高める重要な表面処理技術です。リン酸塩皮膜処理や黒染め処理、陽極酸化処理、さらにその他の有機・無機系皮膜まで、用途や素材に応じて多様な方式が存在します。

東洋ドライルーブでは、リン酸塩皮膜処理(リン酸マンガン処理・リン酸亜鉛カルシウム処理)や黒染め処理、陽極酸化処理(対応拠点:ドライルーブタイランド)にも対応しています。処理条件の管理も徹底し、性能と質に優れた化成皮膜処理を行うことが可能です。金属の命を延ばす化成皮膜処理を行いたい場合は、お気軽に東洋ドライルーブまでご相談ください。

 

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