耐薬品・防ガス被膜とは?被膜の種類や特徴、使用用途を解説

耐薬品・防ガス被膜とは、酸・アルカリ・有機溶剤・各種ガスなどによる材料の劣化・腐食・透過を防ぐために、表面に形成する機能性被膜です。耐食性・耐摩耗性・撥水性・断熱性など、目的に合わせてさまざまな性能を付与できることから、機械部品や電子機器、建材、自動車、航空宇宙分野まで幅広く活用されています。
しかし耐薬品・防ガス被膜とひと口に言っても、コーティング方法や素材の違いによって得られる効果は大きく異なります。本記事では、耐薬品・防ガス被膜の代表的な種類や特徴、主な使用用途についてわかりやすく解説します。耐薬品・防ガス被膜等について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
耐薬品・防ガス被膜とは?

耐薬品・防ガス被膜は、基材表面に薄膜を形成することで、素材本来にはない機能や特性を付与できる表面処理技術です。厳しい環境条件下での使用や、高い耐久性・耐摩耗性が求められる製品に多く用いられ、過酷な使用環境においても安定した性能を発揮します。例えば屋外で使用される機器は、紫外線や雨水などによる劣化を受けやすい環境にさらされますが、防錆被膜を施すことで腐食を抑制し、長期間にわたる使用が可能となります。その結果、修理や交換の頻度が低減され、ランニングコストの削減にもつながります。
耐薬品・防ガス被膜の防護メカニズム
耐薬品・防ガス被膜は、基材の表面に緻密に構築されたバリアとして機能します。このバリアが外部からの劣化要因を遮断し、反応自体を抑制することで素材を守ることが可能です。
例えば防曇処理加工には、これまで界面活性剤が用いられてきましたが、高性能吸水ポリマーを活用することで安定した効果を発揮できます。温度・湿度の変化により発生する曇りを吸水性ポリマーが吸収することで、長期間視界をクリアに保つことが可能です。耐薬品・防ガス被膜によってそれぞれ使用する成分やメカニズムは異なるものの、分子設計の工夫により、あらゆる劣化要因から素材を守れると言えます。
ドライルーブ製品群内での耐薬品・防ガス被膜の種類

ドライルーブの耐薬品・防ガス被膜にはいくつか種類があります。
- 耐薬品被膜
- 防錆被膜
- ガスバリア被膜
- ゴム用金型への離型被膜
- 抗菌被膜
- 木材用不燃被膜(防カビ被膜)
それぞれの機能や特徴、使用用途などについて詳しく解説していきましょう。
①耐薬品被膜(Chemical-resistant film)とは?

耐薬品被膜とは、酸やアルカリ、有機溶剤などの化学物質による劣化を防ぐために用いられる高機能被膜です。化学物質・薬品に対して高い抵抗性を持ち、金属表面の腐食を長期的に防ぎます。
耐薬品被膜の機能や特徴
耐薬品被膜の主な機能は、化学薬品に対する抵抗性を付与することです。金属に何も施さずに化学薬品を用いた場合、金属の表面が酸化・腐食・溶解などの変化が起き、耐久性の低下につながります。しかし、耐薬品被膜をコーティングしておくことで、密な被膜形成により化学成分の反応性を低減させることが可能です。対象の薬品に応じて最適な被膜を用いることもできます。
化学薬品に触れることで発生するイオン化反応や酸化反応なども遮断でき、設備の寿命を大幅に延ばすことも可能です。他にも、耐薬品被膜によっては汚れの固着を防ぎ、薬品による洗浄・消毒を繰り返し行っても状態を維持できる場合もあります。
耐薬品被膜が用いられる対象や使用用途
耐薬品被膜が用いられる対象・場面は数多く、例えば各種タンクやバルブ、配管、ポンプなどに使用されます。特に化学薬品を取り扱う工場などでは設備や部品の多くに耐薬品被膜が用いられている場合が多いです。また、電子部品や精密機器など、薬品を使用する工程における腐食を防ぐために耐薬品被膜を用いる場合もあります。
耐アルカリ性や耐酸性が向上することから、排ガスに含まれる凝縮水からアルミダイキャストの腐食を防ぐ目的で使用されたり、アンモニアやガソリン・合成燃料からの腐食を防げる被膜も存在します。薬品に触れる可能性がある環境では、耐薬品被膜によって素材劣化の抑制や安全性の向上、コスト削減を図ることが可能です。そのためにも使用する薬品の種類や温度、濃度、接触時間など、環境条件を配慮した上でどの耐薬品被膜を用いるかが重要となってきます。
②防錆被膜(Rust preventive film)とは?

防錆被膜とは、金属が酸素や水分、塩分などと反応して錆びるのを防ぐための被膜です。金属表面と腐食因子の接触を遮断したり、化学反応自体を抑えたりすることで、製品の寿命を延ばすことができます。
防錆被膜の機能や特徴
防錆被膜の主な機能として、金属表面を高密度な膜で覆うことで、水分や酸素、塩分などと触れさせないことが挙げられます。金属は一般的に水に触れるとイオン化を起こし、酸素と反応しやすい状態になります。この状態で酸素と結合すると酸化が発生し、錆につながってしまうのです。
実際に未処理品と防錆被膜を施した素材で塩水噴霧試験を行ったところ、未処理品は錆の影響で、わずか8時間で試験が終了してしまいましたが、防錆被膜を施した素材は1000時間経過しても錆は発生せず、防ぐことができています。防錆被膜は、金属表面をコーティングすることで水分や酸素を金属に触れさせず、反応させないことを重視しています。
また、酸化反応だけでなく、腐食につながりやすいイオン交換や電流伝達を被膜によって阻止することも可能です。例えば「リン酸塩被膜」は、リン酸塩を含む処理液に金属を浸すことで、金属の表面で化学反応が起き被膜が形成されます。このリン酸塩被膜によって防錆性が向上するだけでなく、塗装・メッキの密着性や耐久性の向上にもつながります。
防錆被膜が用いられる対象や使用用途
防錆被膜は金属の腐食を防ぎたい場合に用いられますが、特に機械部品や工具、自動車、家電製品などに用いられます。特に自動車業界では車体や部品の塗装前処理、ボディの下地などで広く活用されています。
また、建設業界で用いられることも多いです。鉄骨や鋼板などにリン酸塩被膜を施すと塗装の持続性が高まり、屋外での使用にも耐えやすくなります。そのため、住宅だけでなく橋梁やガードレールなどインフラで用いられることも多いです。
また、防錆被膜は単に金属の腐食を防止するだけでなく、外観として使用できる被膜も存在します。そのため、家電や工具、日用品などに施されるケースもあります。腐食を防ぎ安全性を向上させたい、修理・交換によるコストを削減したい場合には欠かせない被膜と言えるでしょう。
③ガスバリア被膜(Gas barrier / Gas shield film)とは?

ガスバリア被膜とは、水素や酸素、二酸化炭素などの気体が素材の内部に侵入したり、内部から透過したりすることを防ぐために用いられる被膜です。緻密な構造を持ち、品質保持や電子部品の性能確保のために用いられることが多いです。
ガスバリア被膜の機能や特徴
ガスバリア被膜の主な機能は、ガスの透過を極限まで抑制することです。例えば酸素の侵入を防いで酸化による劣化や腐敗を防止します。また、水蒸気の侵入・流出を防ぐことによって、湿気による機器不良を回避することも可能です。
ガスバリア被膜によっては光学性能や成形性を維持できるものもあり、柔軟性を持たせることも可能です。この柔軟性は加工性の両立にも寄与しており、さまざまな基材にコーティング加工ができるという特徴もあります。
ガスバリア被膜が用いられる対象や使用用途
ガスバリア被膜を施した透明プラスチックフィルムは、あらゆる業界で活用されています。例えば食料品や医薬品、電子部品の包装材として用いられることが多いです。食料品の包装に使われている透明プラスチックフィルムは、酸化や乾燥から食料品を守り、なおかつにおい移りを防ぐこともできます。医薬品や衛生材料であれば湿度や酸素を防ぐことで品質劣化を防止できますし、電子デバイスや光学部品であれば水分侵入による故障を防ぐことも可能です。また、フッ素ゴム系のガスバリア被膜を用いると、ガスの透過を抑制できるだけでなく耐熱性や耐屈曲性をプラスすることもできます。
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを含むフラットパネルディスプレイの基材にはガラス基板が用いられていますが、薄膜化や軽量化、耐衝撃性の向上などの観点から、透明プラスチック基板への代替要求が高まっています。しかし、透明プラスチック基板はガラス基板に比べて酸素や水蒸気を透過してしまう性質を持っています。特に有機ELディスプレイの電極には仕事関数の低い金属が用いられることが多く、酸素や水分に反応して劣化が進行する可能性があるのです。この透明プラスチック基板に対してガスバリア被膜が用いられています。
④ゴム用金型への離型被膜(Release film for rubber mold)とは?

ゴム用金型への離型被膜とは、ゴム用金型にコーティングを施すことで金型と製品の貼りつきを防ぐことができ、スムーズに取り外せる状態を維持できる被膜です。貼りつきを抑えることで金型の損耗を抑制でき、製品形状を正しく保てるようになります。
ゴム用金型の機能や特徴
金型を使ってゴム製品を成形する場合、金型で成形した状態で加硫工程に入ります。しかし、そのまま加硫工程に入ることで製品は金型にはりついてしまい、加硫後の脱型時に貼りついて剥がれないことも多いです。フッ素樹脂コーティングによって貼りつきを防ぐことも可能ですが、通常のコーティングでは膜強度が低く、剥がれてしまう可能性が高いです。そのため、従来のフッ素コーティングとは異なり、分子レベルで被膜構造を制御した高機能被膜を取り入れることで、脱型時の剥がれを防ぎながら、業務効率や量産性の向上を目指します。
また、離型被膜を用いることで摩擦や化学反応による金型の劣化を抑制したり、クリーニング頻度が減るので保全費の削減につながったりするなど、金型保護の観点から見てもメリットがあります。
ゴム用金型が用いられる対象や使用用途
ゴム用金型への離型被膜は、ゴム用金型を用いる場面で必要不可欠となってくる被膜です。例えばゴムの射出成型金型や寸法精度を必要とする金型の離型用として用いられます。また、耐摩耗と潤滑性を必要とする部品や、耐摩耗性・非粘着性が必要な部品、粘着剤や粘着物の離型などにも用いられることが多いです。特に自動車部品業界や半導体業界、電子業界などで活用されています。
より具体的に言うと、例えばOリングは産業用機器などに欠かせない部品となりますが、ゴム製なので製造する際には金型から外しやすくすることを目的に離型被膜が用いられます。金型に貼りついたOリングを無理やり剥がそうとすると、割れや欠けといった欠陥をもたらしてしまい、産業用機器などに影響を与えてしまう可能性もあるため、ゴム用金型への離型被膜が必要となります。
⑤抗菌被膜(Antibacterial film)とは?

抗菌被膜とは、ウイルスや細菌、カビなどが基材の表面で繁殖するのを防ぐための被膜です。抗菌は菌の成長・増殖を抑制するものであり、除菌や殺菌のように菌や微生物を減少させるものではありません。しかし、そもそも菌が多くいる状態を防げるようになっているため、衛生性を必要とする場面や器具などに多く用いられています。
抗菌被膜の機能や特徴
抗菌被膜の主な機能は、菌や微生物の増殖を抑制することです。消毒や除菌・殺菌によって菌やウイルス、微生物などの増殖を無効化することはできますが、効果が持続されるわけではありません。一方で、抗菌被膜はコーティング層によって持続的に有効成分が働き、長期的に衛生環境を維持できます。これにより、衛生管理の省力化を図ることも可能です。
また、菌やウイルス、微生物を除菌・殺菌しようとすると、薬剤による刺激や色落ちが発生するリスクがあります。しかし、コーティングによる抗菌被膜は施工箇所だけでなく、人体への影響も最小化されているので安心です。
抗菌被膜として活用される成分は、主に銀イオンやプラチナ、光触媒などがあります。銀イオンは抗菌効果だけでなく消臭・防カビ効果も付与でき、プラチナは抗酸化効果が高く、空気を常に清潔に保ってくれます。光触媒は二酸化チタンと呼ばれる成分を活用しており、光を受けることで活性酸素を発生させ、菌やウイルスを分解し、二酸化炭素または水に変化させます。
抗菌被膜が用いられる対象や使用用途
抗菌被膜が用いられるのは、主に人が触れる機器や設備、清潔性が求められる環境、学校や病院など感染リスクの高い施設などです。例えばドアノブや手すりなど多くの人が触れるものに対して抗菌被膜を施すことで、菌やウイルスが繁殖しない状況をつくることができます。また、厨房や医療施設、食品加工施設などの清潔性が求められる環境でも、抗菌被膜を施すことによってその清潔性を維持できます。
2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、抗菌被膜の需要はさらに高まっています。近年は抗菌仕様の製品も数多く登場するようになりました。そのため、抗菌被膜もあらゆる基材に対して加工できるようになっています。
⑥木材用不燃被膜(防カビ被膜)(Fire/Mold-resistant coating)とは?

木材用不燃被膜(防カビ被膜)とは、木材の表面に塗布またはコーティングすることで燃えにくくするための不燃性能や、カビの発生・繁殖を抑える性質を付与する被膜です。建築物や内装材などで木材を使用する際に、火災のリスクを抑えるために被膜処理が行われます。
木材用不燃被膜(防カビ被膜)の機能や特徴
木材用不燃被膜(防カビ被膜)の機能は、不燃・難燃性の付与と防カビ性の付与が主に挙げられます。不燃・難燃性に関しては、木材の表面に保護膜を形成することで火事になってしまった場合でも燃焼を防ぐことが可能です。完全に燃えないようにすることはできないものの、建物から逃げるための時間を稼げるようになります。さらに、避難する上で有害な煙・ガスを出さないようにする性質を持つ塗料もあります。
木材用不燃被膜によっては防カビ性能を付与できるタイプも存在します。木材は直接濡れない環境であっても湿度60%以上になるとカビが発生する可能性が高まるとされており、さらに温度が10~30℃(28℃前後)で活発化します。また、カビ菌は木材の細胞に含まれる糖分・デンプンを餌に増殖してしまいます。こうしたカビの繁殖を防ぐためにも、木材用不燃被膜(防カビ被膜)を施すことでカビの発生リスクを低減させます。
木材用不燃被膜(防カビ被膜)が用いられる対象や使用用途
木材用不燃被膜は内装木材・外装木材に使用されることが多いです。例えば壁材や天井材などの建築に用いる内装木材に木材用不燃被膜を施すと、建物の耐火性能が向上します。さらに、ウッドデッキや外壁などカビが発生しやすい外装木材にも施すことで、カビの繁殖を防ぎ、清潔な見た目を維持することが可能です。
耐薬品・防ガス被膜なら『東洋ドライルーブ』

今回は、耐薬品・防ガス被膜の種類や特徴、使用用途などを解説してきました。基材に対して密な膜を形成することにより、基材に機能性を付与できる耐薬品・防ガス被膜はあらゆる産業・製品に用いられています。
東洋ドライルーブ株式会社が開発した「ドライルーブ」は、潤滑物質と各種特殊バインダーをハイブリッドに配合し、各種溶剤や水に分散させた耐薬品・防ガス被膜です。今回紹介した被膜の種類にも対応しており、耐薬品や防錆、ガスバリアなどさまざまな効果をもたらします。あらゆる製品・部品に高い付加価値を与えられるドライルーブをぜひご活用ください。
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